人間社会には、見えないヒエラルキーがそこかしこにあります。
そして、それは我々がまだランドセルの背負い方すら怪しかった時代
――つまり、小学校の低学年にも、しっかりと存在していました。
その中でも最も強固だったのが「かけっこヒエラルキー」です。

かけっこが速い者がエラい。これはもう絶対的な真理でした。
私は小学校1年生のときから、ずっと角ちゃんに負け続けてきました。
角ちゃんは同級生でも圧倒的に速かった。
速すぎて、もう彼の後ろ姿しか見えないくらい。
スタートラインで同時に「よーいドン」されたのに、
彼だけ別の物理法則のもとで走っている感じ。
彼は、今や串カツ劇場のオーナーで頑張ってます。
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人生にもいろんなレーンがあるものですね。
そんな角ちゃんに何度も敗北しながら、私はずっと2番手として生きてきました。
女子の視線も、もちろん角ちゃんに集中していました。
1位総取りの残酷な法則が小学校にもあったのです。
まるで8馬身差でゴールされた気分。
あのとき、逆立ちしても勝てないなと、子ども心に思ったものです。
でも今になって思うのです。
「いや、もっと練習しとけよ」と。
足の速くなる術を学習して練習を積むことで
1馬身差くらいに縮められたはず。
大人になると、走る速さなんてほとんど役に立たなくなるのに、
あのときはそれがすべてのように感じていた。
当時はかけっこを天性のものだと思っていたので、
勝負を変えるべく、勉強というフィールドに軸足を移しました。
「かけっこ×勉強」の二刀流。
いわば、文武両道狙いのハイブリッド型。
これが自分の生きる道だと舵をきりました。
勉強でも双子の冨野兄弟(現医者)には勝てなかったけど
総合1位にはなれたかなぁと。
結果的に、運動会のヒーローにはなれませんでしたが、
学年通信表の上では静かな存在感を放つことができた。
誰に見せるわけでもないけど、オール5でした。
人生は長距離走です。短距離で勝てないなら、持久力で勝負。
1つの分野で負けても、違う道もある。
ただ、あのとき一度くらいは、角ちゃんに勝ってみたかったなぁ。
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編集後記
中学生にあがったら他の小学校からきた
千布くんにあの角ちゃんも全然かなわなかった。
世界は広い、と中1で気づきました。